静寂

静寂

何ひとつ聞こえない町は沈黙した
何もみえない　　　まっ暗闇　　

大地の一揺れで　　文明の築いたあらゆるものが　停止した

冷蔵庫も　テレビも　あらゆる器具の電源が消え
いつもとびかっている電磁波のほとんどが　一瞬にして　かき消された

町のざわめきも　　電車の音も　
すべてのうなりが　　一瞬で　　消え去った

静かだ　　初めてあじわう　　静けさだ
ぬばたまの　　闇と沈黙　　　　全くもって　　異様だ

この一瞬で　　文明は消え去り
現代人の久しく忘れていた　　太古の静寂が　　そこにあった

太古　　人は　　この静けさ　　この鎮まりのなかに　いた
豊かな地球の中で　　　この静寂の中にあった

太古　人は　　　この静けさのなかに　　豊醸なる音をきいた
微妙　　精妙な　　声なき声に　　耳をかたむけた

耳にきこえぬ音を聞き　　目にみえぬものを　見た

星のささやき　　天体のひびき　　宇宙の深遠からのうなり
自然からのメッセ-ジを心で観じた

月の語り　　精霊の足音　　木の声を　　
風のうなり　　草のそよぎ　　　虫の声
水のざわめき　　花のさざめき　　鳥のさえずり
ふつふつとわく　麹のつぶやき　　土との語らい　
大地をゆるがす　火のとどろき

全ては　　波となって伝わり　　心に響いてきた

静寂の中に　人は　あらゆるものを感じ　あらゆるものを　聞いた
心澄ませて　　人は　　見えない世界からの　メッセ－ジを聞いた
心を無にして　　全てに溶けこみ　　全てと一体になって
あらゆる響きとともに　　　たゆたった

静寂こそ　　もっとも　　広大無辺にして　　豊醸なる世界

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