白夜

白夜

北から昇り　　　北へと沈む　太陽
時は　　　　刻むことをやめ
全ては　　　うすぼんやりとした明るさの中

茫漠とした景色にみいる　　けだるい瞳は
うれいをおびて　　　　　虚空をさまよう　
わたしの心は　　　　どこへいったの　　

長い冬　　　一日中暗く　　　　　　　　
風は吼え　　大気は震える

光りと影とが　まじりあう　　薄明のなか　　　
私は沈黙し　　　耳をすませる　
感覚を研ぎすませ　　じっと待つ

遠くから聞こえてくる　　地鳴りを
私のなかに　　ふつふつと満ちてくるつぶやきを

怒涛のごとく　　吹雪の荒れ狂った翌朝
空と大地は　　きれめなくつづいていた

きらきらと虹色に輝く　　ダイヤモンドスノ－は　　　　
透明な大気から　　　生まれ出た妖精

さらさらと　　手からこぼれる　　粉雪は
かたくなだった　　　私の心のかけら

空をかける　　オ－ロラは
いままで　　　見えていなかったものへの　予兆　　

春だ　　春が　　やってきた
鳥が　　歌ってる　　　
暖かい風が　　頬をさわってゆく

新しいいのちが　　あちこちで　　めざめはじめている
氷が溶けて　　ちろちろと　　水の流れ出す音がする
わたしのなかでも　　何かが動きはじめている

白夜　　いのちあふれる夏
この薄明のなかに　　こんなに沢山のいのちが息づいていたんだ　
わたしのなかにも　　じわじわと　　いのちの喜びがあふれてくる　　　　

みんな　　みんな　　生きて歌っているんだ

生命の喜びを　せいいっぱい　　謳歌しているんだ

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