* * * 旅 * * *
ロンドン
1996年 9月26日 〜 10月11日
私が日々ボランティアなどで、なにかと忙しくしているのをみかねた主人は、
この十月の結婚記念日に旧婚旅行に誘ってくれた。
そこには、そろそろボランティア活動と縁をきってもらいたいとの魂胆がみえみえだ。
コンピュータシステムエンジニアの主人はたびたび外国へ行く。
今回もドイツで一週間の仕事。
その後に休みをとって私とフランスの美術館めぐりの計画をたてていた。
私も地震以来一年半、馬車馬のごとく動いてきて、
夏休みの仮設の子供たちの北海道キャラバンの後始末に終われて、
いささか疲れていたので主人の提案にのることにした。
しかし、彼が一週間働いている間のんびりホテルで待っているつもりはない。
リュック背荷って一人でヨーロッパめぐりをするといったら旅行社の人が
ヨーロッパが始めての″おばさん″がそんなことするとは初耳だと驚いていた。
早速パスポートとユーレイルパスと国際免許をとった。
長男は東京、長女と次男は高校生なので心配はない。
小学生の次女だけ小学校から近いボランティア仲間のの吉新さんのところと
元気村の2カ所に預けることにして準備完了。
* * * 9月26日(木) 神戸〜ロンドン * * *
早朝6時出発。阪急六甲駅で、出勤前のたぐさん(ボラ仲間)と偶然に会う。
難波から関西空港へ、9時20分到着。
搭乗手続きを済ませてから銀行で各国のお金に替える
イギリス(1ポンド=183.6円) 百ポンド(約一万八千円)
ドイツ(1ドイツマルク=約76円) 五百二十DM(約4万円)
スイスフラン(1sf=94円) 三百sf(約三万円)
イタリア(1リラ=0.0843円) 五九万リラ(約五万円)
スペイン(1ペセタ=1.0108円) 二万ペセタ(約2万円)
フランス(1フラン=24.4円)二四五〇フラン(約六万円)
あとは、カードがあるので、なんとかなるだろう。
(ホテルは勿論、列車の切符、美術館の買い物、地下鉄の回数券もカメラのフィルムから、
ピザを買うのまで全部カードでできたので現金の余った国もあった)
関空のサクララウンジでゆっくり待つ。
11時半ようやく搭乗開始。
ハバロフスクの空がこんでるそうで1時間遅れのフライトだ。
小雨降る中をとびたつ、神戸方面がよくみえたがすぐ雲の中。
窓ぎわで、後方が右翼のねもとなのでよく見える。
日本海にでると良いお天気。
海はまっ青、白い波。
いよいよお日様を追いかけて飛んでゆくのだ。
日本時間昼の12時半をすぐロンドンの早朝4時半にあわせる。
以後ずっと時計を2本したままで過ごす、日本の子供たちを忘れないために。
すぐロンドン時間のつもりになって、豪華な朝食(日本の昼食)を食べる。
* * * シベリアの大地 * * *
シベリアの一面のツンドラの大地には、赤茶と灰色の起伏のある山野がつづく。
浮かぶ雲の影をかさねて、まだらもようの大地は広がる。
北には雪をいただいた美しい山々が縦横につらなり、川はクネクネと蛇のはうようにつづく。
一万mの上空からも広い広い中洲のみえる大河が北へと向かう。
細い糸のような川は、右に左にとおどるようにリボンの舞うように軽やかに光り輝く。
しかし緑の息吹のほとんど感じられない、
一面カビにおおわれたような赤茶けた大地とシュガーパウダーをまぶしたように銀色に煙る、
凍りついた山々。
この大ツンドラ地帯が、いつか緑の森林にかわることを夢みていたい・・・
それはこの地球において、科学と自然の融合をめざす最後のこころみになるかもしれない。
大河は東西に南北に縦横無尽にのたうちながら黒い蛇となってはいずりまわる。
遠い山脈はホイップクリーム。
ホワイトシロップで固めたような凍ったツンドラの大地。
そして尖がった山々の連なる山脈は交錯しながら大山脈を形成しているようだ。
この凍りついた大地と空気の中では、流れ来る雲よりほかに、
大地から湧きあがるものはなにもないかのように思われる。
* * * ロンドン時間朝十一時半(日本時間夜七時半) * * *
七時間飛んでもまだまだ凍る大地はつづく。
ひらひらと舞いおどるかのような白いテープのような川、点在する小さな湖。
一面の雲海のなかに大きな台風の目のように雲が渦巻いている。
見渡すかぎりまっ白な雲の大平原、雪の女王のこどもたちが、
綿菓子のような雲の上で遊んでいる。
カイを連れ去った雪の女王の北の大地、氷と雪の極北真近、
地軸の近くからうなりが聞こえる、グゴォーーー・・・・ブンブンブン・・。
魂のそこにひびいてくるような うなりが・・・ しかし、かすかに軽やかに・・・
地球のうなりがブンブンブン・・・
みんなをのせてブンブンブン・・・
わらってないてもブンブンブン
おこってないてもブンブンブン
ただ ひたすらにブンブンブン
すべてをわかってブンブンブン
ささいなことさとブンブンブン
そうさ みんなでブンブンブン
ちいさなこえでブンブンブン
こえをあわせてブンブンブン
みんないっしょにブンブンブン
宇宙もゆるがすブンブンブン
北欧近くなって湖も増え、海がみえる。
町並みと耕地もみえてきた。
太陽をおいかけてながらひたすら飛行機は飛ぶ。
午後3時半オランダがみえる。
4時半ロンドンヒースロー空港到着。
まる半日の空の旅だった。
霧のエアポート・ロンドンは、朝からの雨もあがり曇り空。
空港周辺にはオレンジ色の屋根がならぶ。
そうか、関西の○×住宅はこれを真似たのかな。
イギリスには似合っていても、日本にはちょっと・・・。
* * * ロンドンの雨は下から降る * * *
空港からの二階だてバスにのりこみロンドン市内へ向かう。
バスは貸し切りみたいにガラガラ、見晴らしも抜群。
バスガイドさんはいなかったけれど大満足。
空港をでて、しばらくは美しい牧場や耕地がつづき、牛や馬が放牧されている。
住宅の屋根にはみんな角みたいにエントツがついている。
1本角、2本角、3本角、かわいい!
さすがサンタさんのいる国!
街中のハイドパークコーナーでおりて、ホテルにむかう。
ホテルリッツの近所のホテル!に荷物をおき、早速ピカデリー広場へむかってお散歩。
かわいい赤い昔ながらの型みたいなポストはずんぐり丸くてユーモラス。
タクシーも天井の高いズングリ型オースチン、観音開きのドア。(写真に3台・・)
黒色が基本色だが、時に好き放題いろんな絵をかいているのも見かける。
粋な絵柄でびっくりするようなニューアート風もあって楽しい。
新旧が美しく共存しているのがロンドンのように思える。
そこには洗練されたセンスとユーモアが感じられる。
伝統を大切にしながら、古い殻を破るのも大いに楽しんでるって様子に、
かつての栄光の余裕と残照を感じさせられる。
赤い2階だて市バスが暴走族さながらに駆け回り、
2階の屋根なし観光バスも観光客をのせていきかうロンドン。
近年2階だてバスのガードレール激突事故もけっこう多いようにきいた。
街中の排気ガスはかなりくさい。
高校時代ならったサブウェイとアンダーグランド(地下鉄)の違いを始めて認識した。
イギリスは日本と同じ車は左側通行だが、全部右ハンドルみたい、
外車ばかりで全部右ハンドルなのよ。
断然右の方が運転しやすいのに・・・。
日本でかっこつけて左ハンドルのまま輸入しているようだけど少しおかしいね。
イギリスでは、木曜日は店が遅くまであいている″花木″だ。
ネオンピカピカのにぎやかな夜、シェークスピアも上演している。
歓楽街には映画館もレストランもダンスホールもカフェもチェンジ屋さんもにぎやか。
落ち着いたピカデリー広場のまん前には、TDK、SANYOの特大サイズのネオンサイン、
コカコーラとマクドナルドと並んでいるとはいえ、少々ぎょっとさせられる。
ナショナルギャラリー横の聖マーティン教会で、
ロンドンベルモントアンサンブルがコンサートをしているので入る。
7時半から9時半で、たった1500円ほど。
日本での演奏会の高い値段はいったい何だと私はいつも怒ってたけど
外国ははるかに安い(パリも安かった)。
日本では西洋音楽をお高いものだと崇拝する人が多いのか、文化省庁の業務怠慢か。
日常茶飯に″生″で楽しめるものこそ本来の音楽なのに。
日本の音楽事情の貧しさ、私自身の精神的余裕のなかった近年を残念に思う。
日本に本物の生の音楽はほとんど希少価値になりつつあるのか・・。
マイク片手の電気的波長での音楽では満足できない私・・・。
聖堂内は人でいっぱい。
ポピュラーなモーツアルトプログラムで、建物の音も美しく響き、
聴衆のゆったりと楽しむ雰囲気と混然一体となってこれぞ″音楽″心地良い。
そう、音楽はまさに広く深い意味での総合芸術なのだ。
こんなふうに古い建物のままで身近に音楽を楽しめるなんて素敵!
日本でのしっとりとした情緒のなかでの風にそよぐ葦の葉ずれ・・・
と日本ならではの音楽の味わいも確かにある。
帰ったらそれを捜さなくてははじまらないと切に感じる。
私の音楽的アイデンティティーは何処に・・・。
ロンドンの雨は霧雨、傘をさしていても風といっしょに下からふきあげてくる。
傘はほとんど役にたたない。
黒く高い帽子に黄色のカッパのおまわりさんが、
ストリートミュージシャンの警備にあたっている。
通れないほど人だかりがして、テレビも来て、なかの様子を大画面に映しだしている店がある。
スーパーモデルか、有名人か、ガードマンも沢山くりだして高級車がぞくぞくと並び、
それらしき人々がのりこんでいる。
その様子を夜のテレビのニュースでもしていた。
ロンドンで傘はかかせない。
2日めも晴れている白昼、突然海から雲が来て霧雨をふらせてゆく。
ロンドンでは傘より、レインハットとレインコートの方がいいようだ。
昔の紳士がこうもり傘を持ってたのに納得。
* * * 9月 27日(金) ロンドン観光 * * *
ホテルに荷物を預けて、ロンドン観光にでかける。夕刻の飛行機まで時間がある。
朝の公園出勤姿で犬の散歩をさせている人が多い。
9時をすぎてもさすが首都、フレックスタイムか出勤の人はまだまだ多い。
パトカーは青いランプを点滅させながら、
フィヨィヨフィヨと聞きなれないサイレン鳴らしてかけぬけてゆく。
あっ、見つけ、やっと一台だけ左ハンドルのBMWが駐車していた。
まずはニューボンドストリートを通りJCBセンターに行っていろいろと聞く。
日本語で話せるのがうれしい。
次は、チャリングクロス駅のインタナショナルチケットセンターに行く。
スイスからローマ、ミラノからバルセロナのホテルトレインのクシェットや指定席、
帰りの仏英間のユーロスターの券などを手にいれておく。
日本で手配するより格安だ。
あとは、おきまりの観光コース。
走りぬけて、駆けぬけて・・・普段の運動不足を痛感。
とうとうたるテムズ河をみおろすビッグベン、街路樹も美しいストリ−ト。
ウェストミンスター寺院は、正面の階段がなくて拍子ぬけ、
ロイヤルウェディングはここじゃなかったっけ・・・?
バッキンガム宮殿前は11時前にいったのに、
門の前は勿論のこと道路をはさんだ公園の石段からも
ポロッと落ちそうなぐらい鈴なりの観光客。
沢山の衛兵さんは、ご苦労さま、いまや観光の目玉ですね。
女王様にはお目にかかれなくて残念でした。
昔一家でUSAをモータホームで横断した時、
ワシントンDCでレーガンとゴルビー両大統領を垣根ごしに見た。
そしてその興奮の余韻がありありと残るホワイトハウスにもすぐ入れたし、
議事堂も観光客でいっぱいだった。
でもロンドンではそうはいかない。
ダウニング街にも入れなかったし、首相官邸も遠くからだけ。
ホワイトホールも予約のものにしかみせないという看板があった。
テロがこわいのだろう。
大英博物館は最終日にとっておいて、電話で博物館すぐのホテルに予約だけいれ、
地下鉄でヒースロー空港へむかう。
デュッセルドルフ行きでは、搭乗の際までパスポートを見せる。
かなり神経質になっている様子だ。
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